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new books| November 7, 2008





Agnes Martin
Cooke, Lynne / Kelly, Karen (eds.)
14 in colour, 60 in b/w, 240 pp, 25.4 x 19.1 cm, paperback with flaps
English 2009

アグネス・マーティンは、グリッドや(水平)線、白やグレーを基調とした色面による絵画によって知られるミニマリズムの代表的アーティスト。しかしその作品の成立は、感性的・精神的なレベルを契機とするものであり、彼女自身は自らを抽象表現主義の画家であると定義していた。ポロックと同年(1912年)に生まれたという世代的な結びつきはそれを傍証する。また実際の作品を注意深く見つめてみても、その画面は、鉛筆の使用や淡い色彩の絵具の薄塗りによる繊細な手仕事からなるものであり、画面のグリッドは物理的レベルで支持体の構造を画面内部で反復するというようなメカニズムに還元されるものではない。むしろそれはフィジカルなものとメタフィジカルなものを、いかにして往還させるか、という課題に貫かれていたと言えるだろう。本書は多分野の論者による12本の論考を収録。マーティンの40年にわたる活動を多角的に検証する。(沢山遼)





Disappearance of Objects: New York Art and the Rise of the Postmodern City
48 in colour, 141 in b/w, 240 pp, 24.1 x 20.3 cm, hardcover
English 2009

美術史家ジョシュア・シャノンによる、1960年頃のNYにおけるアートの動向とポストモダン都市への移行を関連づけて探究した一冊。1958年にアラン・カプローが「新しい芸術」として予見したエッセイの引用から始まり、経済的かつ建築的に急速な変化を遂げたNYの都市の変化を背景に、当時活躍していたクレス・オルデンバーグ、ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグ、ドナルド・ジャッドの4人の作家に焦点を当て、彼らの作品に潜む「マンハッタン再開発」との関連性を明るみにする。「ニューヨークのマテリアリティ 1960」「ネオ・ダダ都市ーオルデンバーグ」「物体の消滅ージョーンズ」「ブラック・マーケットーラウシェンバーグ」などの論考を収録。(粟田大輔)





Time & Place: Rio de Janeiro 1956-1964, Milan-Turin 1958-1968, Los Angeles 1958-1968
illustrated throughout, 430 pp, 23.5 x 17.0 cm, paperback in slipcase (3 vols.)
English 2009

実験的な企画で知られるストックホルム近代美術館の開館は1958年のこと。その活動初期に指針とされたのは、同時代のパリそしてニューヨークの動向だったというが、同館が50周年を記念し企画したのは当時の美術状況をそれらとは異なる地域から再検証する三つの展覧会だ。50年代の国際化の中で、ボサノヴァやシネマ・ノーヴォとともに美術においてはリジア・クラークらの新具体運動が展開されたリオデジャネイロ。フォンタナやマンゾーニ、またその影響のもと、他と比較しても先端的な表現をみせたアルテ・ポーヴェラの作家を多く抱えるミラノとトリノ。そしてエド・ルシェやホックニーに刺激を与え続けた60年代アメリカ美術のもう一つの重要な都市、ロサンゼルス。各カタログもそれぞれの地域の同時代美術に関する有用な資料となっているが、それらをひとつにまとめたお買い得版の本著は企画全体の趣旨を反映しているといえる決定版。(杉原環樹)





Third Mind: American Artists Contemplate Asia 1860 - 1969
468 pp, 31.5 x 25.2 cm, hardcover
English 2009

アジアを「見つめた」アメリカのモダンアートとアジアの美術を併置するという、ニューアートヒストリー的観点の展覧会カタログ。草間彌生展、蔡國強展などを手がけてきたキュレーター、アレクサンドラ・モンローの広い知見を活かした意欲的な企画。ウィリアム・バロウズとブライオン・ガイシン(彼自身、書道に感化された絵画を描いていた)の共著から取られたメインタイトルが示す通り、影響関係の有無を越えて、直接の関係がないものも含めた作品群の「カットアップ」から東/西の分け方とは異なる新たなテキストを探る。ジャポニズムへの言及はもとより、長谷川三郎や岡田謙三など近代以降の作家も含まれているのが斬新であろう。ただし、彼らがフランス留学を通じて東洋の伝統へ傾倒していった経緯を鑑みても、その実践の礎となる「東洋思想」はむろん無垢ではあり得ない。その屈折と、図像や方法の近似以外のどこを双方の接続点と見なすかを念頭において読みたい。(成相肇)