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new books| November 7, 2008





Paul McCarthy: Inflatables
40 in colour, 128 pp, 28 x 38 cm, 12 paperbacks in box
English 2008

ポール・マッカーシーの表現スタイルは、1980年代の新自由主義下の都市イデオロギーがロサンゼルスにもたらした、社会空間の「歪み」を1つのバックグラウンドにしている。それは、市場原理にもとづいたコミュニティの整理と囲い込みであり、それがフレドリック・ジェイムソンのいう映像の「ポルノ性」を集約させたような、ハリウッドの地の利と相まって、マッカーシーのビデオ・インスタレーションの「閉塞」と「淫楽」という特性を形成していく。こうした、ロサンゼルスの土着性からのマッカーシーの次なる躍進がみられたのは、2000年のハノーヴァー・エクスポにおける、巨大なピノキオの作品だろう。体内に無数のチョコレートバーを内蔵したそのバルーンのスクラプチュアは、スカトロジカルな作風の1つの頂点でもあり、消費/排泄という経済循環をからかいながら、ディズニーランドのシミュラクルとして、形骸化した立体表現の記号性をメタフォリカルに膨張させる。本カタログでは、2000年よりマッカーシーの新たなスタイルとなった、そうした巨大バルーンのスクラプチュアの数々が焦点とされる。ショッピング・バッグにおさめられた15枚のポスターと12冊のブックレットというそのエキセントリックな形態は、まさにマッカーシーの表現をなすニヒリズムの賜物だろう。(大森俊克)





Wolfgang Tillmans
60 in duotone, 80 pp, 29.8 x 21.0 cm, hardcover
English 2008

出版物をリリースする度にクリシェに陥っていく作家と、その表現の孕む問題の複雑性/多様性が顕在化してゆく作家がいるが、現代において、ティルマンスは後者の代表的な存在であるといえるだろう。そんな彼の、1995年にチューリッヒでの個展に際して発表されて以来、長らく絶版状態にあった最初の写真集が待望の再版。曖昧な自己像に揺れ動く若者たちの姿や都市風景、新聞や書籍の切り取りなどを写し取った白黒写真がリズミカルかつインタラクティブに配置された本作は、80年代から現在に至るなかで彼自身が築きあげ拡大してきた方法論の、まさに原初的な現れとしてある。ティルマンス一人の仕事を包括的に眺めるためだけでなく、90年代以降の写真史を理解する上で外すに外せない、きわめて重要な一冊である。(杉原環樹)





Romantic Conceptualism
Seifermann, Ellen / Kunsthalle Nurnberg (eds.)
Jorg Heiser, Susan Hiller, Collier Schorr, and Jan Verwoert (texts), Christine Kintisch (preface)
44 illustrations, 216 pp, 22.5 x 17.0 cm, hardcover
German/ English 2008

2007年、ニュルンベルク美術館で開かれた展覧会のカタログ。60年代に活躍したアンディ・ウォーホルやダグラス・ヒューブラーから、現在活躍中のスーザン・ヒラーやタシタ・ディーンまで23人の作家の作品が集められている。概念的で合理的な印象を持ったコンセプチュアル・アートの本質的な部分に、実は精神的でロマン主義的な側面があるのではないか。コンセプチュアル・アートに現れる欲望やメランコリーといったモチーフ、一時性や過渡性などの方法論等の分析を通して、現代美術を貫くロマン主義の伝統を浮かび上がらせている。作品のロマン主義的な要素を示す証言としてスーザン・ヒラーのインタヴューも収録されている。(松井勝正)